ラプタヘイブン × shabby sic ポエトリー

「ヤオヤドンパチハッピャクヤチョウ」リリースインタビュー

 

 

彼と初めて会ったのは、ちょうど一年くらい前だった。 その日はお店でインストアライブを行っており、共通の知人だったNue the Hermit君を通じ、挨拶を交わした。私は店でもCAKRA DINOMIX (チャクラダイナミクス)を好んで聴いていた事もあり、言葉の刻み具合やフローから彼がインディーラップを好きな事は、なんとなく知っていた。彼は、三重から一人旅で新潟を訪れており、ライブを見た後に新潟のアーティストなどの自主制作の音源をチェックし、店の奥から届きたてのepicのレコードを持っていくと、最高の笑顔を見せ、意気投合した。あれから一年、その間、何度かやりとりをする中で彼の独特の面白さや人間力、CAKRA DINOMIXの活動やKAKEHAN(カケハン)という音楽に関心を持ち、彼が新しいアルバム「ヤオヤドンパチハッピャクヤチョウ」をリリースするという事で、話を聞かせて頂いた。          2020.3.16 shabby sic ポエトリー 佐藤剛章

 

まず、初めに簡単に自己紹介をお願いします。

 

初めまして、Raputa Heaven(ラプタヘイブン)と言います。ラップの他に、作曲、録音編集、デザインをしています。三重県在住で、2012年に結成したCAKRA DINOMIXというグループの事務係をやっています。チャクラは地元の若者を集めて、クリエイターとしての能力を、大きくは地域の創造力を高めることを目的とした集団です。インディーズレーベルとしての機能を持つほか、イベントの開催、地域行事への参加、清掃活動の実施をしています。
 

日本発信の(三重の地元発信の)新しい音楽を作ることを目標に活動を進め、2018年からはKAKEHANという音楽の制作に力を入れてきました。KAKEHANは曲のテンポを示す値であるBPMが全て35.0で作られているのが特徴です。ほとんどのダンスミュージックがBPM80~130ぐらいで作られているのに比べるととても遅いテンポということになります。今作についても全てBPM35.0となっています。

 

CAKRA DINOMIXの活動、地域に根ざした感じで、素晴らしいですね!活動内容に、清掃活動という事があり気になったのですが、なぜそのような活動を行っているのですか?


年に一回程度、峠のゴミ拾いをおこなっています。「自分たちの音楽を楽しんで終わりじゃなくて地域に役立つことをしたい」という意見が出たのがきっかけです。回を重ねるごとに峠が綺麗になっています。事務方としては、事前の段取りと当日の安全対策、分別の徹底など運営が慎重なイベントなので、これまで多くのことを勉強させてもらいました。初めて会う地域の方や議員さんも来てくれたりで、コミュニケーションの時間になって面白いです。

 

これまでにラッパー、プロデューサーとして影響を受けたアーティストについて教えてください。
 

僕は日本語ラップが大好きなので、まずは90年代末からの日本語ラップですね。誰が好きかは皆さんと同じです。笑 影響が強いのは三善/善三さん(現 三善出さん)、大阪のMC ARATAさんです。三善さんは卓越した作詞術の持ち主で、ARATAさんは超直感型のMCです。二人とも機械やシステムでは決して作ることのできない人間臭さが魅力です。日本語ラップのCDからは音作りを学ぶことも多く、特にD.O.Iさんのミックスは常に僕の教科書です。NITRO関連作品は編集の手本として今もよく聞いています。

 

京都在住だった学生の時には大阪のGEBO主宰、SUPPON RECORDSのもとでアンダーグラウンドヒップホップにどっぷりつかりました。数々の名作に触れましたが、ラッパーではABSTRUCT RUDEとCHESTER P、プロデューサーではAmpliveとStoupe the Enemy of Mankindが最高です。Offwhyte率いるGalapagos4というレーベルが、100点中80点ぐらいの作品をコンスタントに世に送り出していて。笑 自分たちもそいういう堅い仕事の運営をできたらなと思います。

 

2007年ごろにはインディーの流通枠が広がるなか、カナダのヒップホップにも影響を受けました。EPIC、SOSOなどの作品は140(関西のGRIMEグループ)結成前のメンバーと買い漁った記憶があります。彼らは現在もリリースを続けていて、shabby sic ポエトリーさんでも購入をお世話になりました。

 

その後、僕はそのままカナダのヒップホップのフォークライクな流れを受けて、北欧のフォークミュージックに手を出しました…笑 140のみんなはグライム研究へ駒を進めていきましたね。今考えてみると、聞く音楽が流行から離れたこともあって、流行のストレスなくKAKEHANが生まれてきたように感じます。

 

今作のアルバムについてお聞きします。どんなアルバムに仕上がったと思いますか?また、特に聴いて欲しいところ、参加アーティストについて、教えてください。

 

良いアルバムになったと思います。KAKEHANサウンドと、僕のセールスポイントである言葉の世界を楽しんでもらえるかと思います。アルバム単位での構成もうまくいきました。当初からテーマとして掲げていたのは「変化を求める姿勢を強く打ち出すこと」と「言葉選びを工夫すること」です。倦怠感に満ちたラップミュージックの中で変化を求める…ということではなく、自分自身が変化したいと日頃から思うようになって。それを作詞で出せました。例えば曲をキャッチーにしようと思った時、ラップのメロディーや構成やトラックや…様々な方法がありますが、言葉選びでキャッチーさを出すこともできます。そうやって言葉選びでなんらかの効果を出すことを念頭に詞を書きました。

 

僕のラップのやり方は人が真剣に話す時の話し方に近いのですが、そこからふざけた言葉を出すと良い変化球になることがわかっていて。笑 真面目なことを言ったりふざけたことを言ったり緩急をつけて「言葉の意味の波」みたいなのを作り出せたかなと。そこを感じ取ってくれたらもう最高です。
 

あと、紹介文では肉体/精神、見える/見えない世界、を行き来すると書いてもらったのですが、今作はそういう描写も多いです。神がかった崇高な領域の話ではなく、「気持ちがこうだから次の気持ちはこうなるよね」「こう感じるから行動はこうだよね」「行動がこうだからこう感じるよね」といったレベルの話です。

 

7曲目の「akadashi」では1番から3番に向かって歌詞が展開しますが、誰もがわかる、みんなの住んでいる世界から、個人の精神的な世界へ描写が変化します。最終的には僕の中で「昨日よりも今日が新しい」という超普遍的な答えに行きつくわけですが、こういう心の変化を生で描写した作詞の工夫を楽しんでもらえたらなと思います。ネタバレですが。笑
 

客演陣は、旧友140からCatarrhNisinとRitzzz、新潟から宇宙忍者バファリンとNue the Hermit、地元三重のベテランレゲエDEEJAYである80 THE DEATHTROYER(ヤマルザデストロイヤー)。最高の男たちです。特にヤマルさんは次作にも客演してくれています。ヤマルさんの歌パートがKAKEHANサウンドによく合いました。

 

 

確かに歌詞では有名人を引き合いに出したり、日頃みんなが感じているような事を独特の言い回しで、笑いを誘っているのかな~と思う部分もあったりで楽しく聴かせて頂きました。しかしながら、ラップはかっこよく聴かせていて、そこはラプタさんの強みであり、魅力だと思います。トラックリストを見るとSKIT-Niigata-という曲があって、気になったのですが、これはどのような曲になっていますか?

 

これは新潟へ遊びに行く機内での録音を使用した間奏で「KAKEHANを海外に紹介するための翻訳文章を機内で考えている」という設定です。客室案内にならって、日本語と英語で読み上げています。意味深な日本語を英語訳して読む。場合によっては日本語訳を読まない。というおふざけ入りです。この曲で新潟へ降り立った後、Nue the Hermitと旅をし、宇宙忍者とも会い、shabby sic ポエトリーへ遊びに行くわけです。笑

 

なぜ、新たな音楽ジャンル"KAKEHAN"を開発される事になったんですか?また、KAKEHANの定義、作る際の制作機材を教えてください。

 

2017年、チャクラ結成5周年のパーティを盛大にやったんです。東京や千葉からゲストを招いて。関西から140も呼んだし、ゲストの中には三善さんも。で、集客150を見込んでいたら、結果15人だったんです。イベントは最高に楽しかったのですが、後の反省会議で「本当に新しいものをここから発信しないと人は自分たちを見てくれない」という結論に至りまして。寛治が家へUSBを取りに行っている間にヒロポジドッグと「テンポがめっちゃ遅かったらどうなるんやろー?35なら140クルーとセッションもできるよね。ミックスの低音処理めんどいからキックはむき出しでー。半分賭けやでこれは」とか言いながら作ったのがKAKEHANの1曲目です。よく質問をもらいますが、BPMが35.0である理由は、「遅いから」と「140クルーとセッションできるから」であり、ネーミングの由来は「半分賭けだから」です。


KAKEHANは、①BPM35.0である ②節の最初がオープンハット(またはクラッシュシンバル)で始まる ③キックが鳴るタイミングで他のパートは全てミュート(ボーカル除く)で作られています。誰でも作れる簡単な仕様です。勘のいい人は気づくと思いますが、1拍目はオープンなのでキックが1拍目に鳴らないということになります。


あと、ライブで披露する「舞」があって、「山の舞」「ウロコの舞」「ケダモノの舞」があります。どんな舞かはライブで。
機材はドラムマシンとシンセサイザーのみで作ってきました。今作はドラムをTR-808の音で統一しているのでROLAND MC 909の中にあるTR-808のプリセットのみです。ベースやウワネタでオーケストラ音源やROLAND SH-101由来の音源をたくさん使用しています。実機は持っていません。


クルーの中ではウワネタが多いトラックを「ゴールドチューン」、ドラムとベースのシンプルな構造のトラックを「シルバーチューン」と呼んでいます。今作の「808」はシルバーチューン、「LIFE」はゴールドチューンと言えます。

 

KAKEHAN誕生、そうだったんですね笑。これを掘り出せただけでも、今回のインタビューやってよかったです笑。
ライブでの舞は気になりますね。いつか機会をみつけて、見たいです。

ちなみに、CAKRA DINOMIX前作の「Doggy Doggy Doggy Dogs」はどちらに当てはまりますか?笑

 

 

 

この曲はシルバーチューンですね。バスドラムの代わりにロータムを音程下げて代用しているというちょっと変なドラム構成なのですが、PVを観て見事にそれを言い当てている人がいて、「すげぇ!!わかってるねー」ってなりました。あと、ゲートプラグインのサイドチェインを用いたミュート技術についてもよく質問されますが、僕はサイドチェインは使っていません。全てのトラックを一度波にして、はさみツールで切り刻んでミュートを作っています。ここで手の内を明かすと、ドラムは全てクオンタイズ、全てボリュームを均一にして使用しています。ミュートのタイミングもほとんどクオンタイズを利用します。発音のタイミングや、音量に差をつけて意図的に作り出すグルーブ感は、ラップにとっては不必要という考えがあるからです。

 

今後KAKEHANがどのようになっていってほしいですか?
 

まず、日本に独自のダンスミュージックがないと考えている人たちにKAKEHANを聞いてもらって、感想を聞きたいです。楽しんでもらえるならどんどん広げていきたいし、物足りないなら更なる新しいものを僕たちと一緒に作って欲しいと思います。

 

 

今後の音楽活動の予定などありましたら、教えてください。

 

CAKRADINOMIXの2ndアルバムの制作が完了しています。これでKAKEHANの3作品目が世に出ることになります。

次作も半分賭けな内容ですが、とにかく最高の仕上がりになっています。

ライブも月に2本程度。ソロでもクルーでも全国に出没予定でいます。

地元でのイベント開催もあるのでHPをチェックしてもらえると嬉しいです。

 

最後にインタビューを見てくださった方に一言お願いします。

 

渾身の作品ですので、是非shabby sic ポエトリーで盤を買って聞いていただければと思います。
そして僕たちの町へ一度遊びに来てください。絶対ここが好きになります。気軽にDMください。

 

この度は、誠にありがとうございました。 

 

shabby sic ポエトリーでのお求めは→こちら

ヤオヤドンパチハッピャクヤチョウ特設ページは→こちら

RaputaHeaven前作LOCALONLYのインタビューは→こちら

 

 

1.808 feat 80 THE DEATHTROYER
2.ヤオヤドンパチハッピャクヤチョウ
3.買える
4.決裁
5.Skit-Niigata
6.Killin’ feat 宇宙忍者バファリン , Nue the Hermit
7.Akadashi(Kakehan)
8.Stress feat Catarrh Nisin , 80 THE DEATHTROYER
9.Kill me again(Kakehan) feat 80 THE DEATHTROYER
10.軌道(吹替版)
11.Humanity(35killin’REMIX) feat Ritzzz
12.シンプルな構造のカケハン
13.LIFE(字幕スーパー版)

 

2,000yen(税抜)

amazon,タワーレコードなど全国のCD販売店にて販売中。

歌詞カードつき

 

All tracks produced by Raputa Heaven

Rec,Mastered by Raputaheaven from TUNEREX ENGINEERING

©2020CAKRA-DINOMIX

STEREO CDMCD009

 

 

 

 

 

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